うずくまる巫女(実話)。
冬の夕方、オレはコンビニに出かけた。
日が暮れて、すっかり夕闇のなか、雑居ビルの1階の真っ暗なエントランスホールで、巫女さんがうずくまって、ごそごそ動いている。
「へえ、巫女さんがこんなところで、何を?……えっ? 巫女さん?」
思わず2度見する。
やはり、暗い場所で、外に背中を向けて、巫女さんがしゃがみこんで、壁だか床だかに何かをしている。
なんとなく「諸星大二郎先生の漫画っぽい」と思ってしまう。
なんだか見てはいけない現場のような気がして、それでも立ち止まって、そっとようすをうかがう。
すると、立て看板「巫女バー」がピカピカと輝いた。
その雑居ビルの2階には、巫女バーがあったのだ。巫女姿の店員さんによる、掃除や点灯などの開店準備だった。暗いところで、看板のプラグをコンセントに入れたり……。
オレは、「そんなもんですよね〜」と思って、立ち去った。